A5ランク

バーベキューと言えば「お肉!」という方が多くいらっしゃいます。最高級ランクを表す「A5」のお肉、みなさん、一度は耳にしたことがあると思います。

A5ランクなどの等級は、どのようにして決められているのか、ご存知ですか?今回は、「牛肉の格付け」についてのお話しです。

牛肉の等級(ランク)は、味ではなく見た目の美しさで決まる

牛肉の格付けは、2つの等級が使われています

牛肉の格付けには、「歩留まり等級」と「肉質等級」の2つの等級が使われています。その格付け審査は、見た目だけで評価されており、味覚(試食)は含まれていません。

牛肉の歩留まり等級について

歩留まり等級は、「A、B、C」の3段階に分かれています。牛の皮、骨、内臓などを取り除いたお肉を枝肉(えだにく)といいます。同じ体重の牛で比較した場合、たくさんの枝肉が取れる牛が高い評価を受けます。お肉の味とは関係がないです。

歩留まり等級を決定するための計算式がありますが、ここでは割愛します。

等級 歩留基準値 歩留
A 72以上 部分肉歩留が標準より良いもの
B 69以上72未満 部分肉歩留の標準のもの
C 69未満 部分肉歩留が標準より劣るもの

一般的に、和牛はAランク、和牛以外の肥育牛がBランク、経産牛がCランクにランク付けされることが多いと言われています。

和牛とは、日本国内で生まれ育ったもの限定です

和牛とは、日本の在来種をもとに、外来種との交配を繰り返して改良された牛の品種名のこと。

次の4品種と、4品種間の交雑種だけが「和牛」を名乗れます。

  • 黒毛和種(黒毛和牛):現在の黒毛和種の大半は、但馬牛の子孫。肉質は世界最高と称される。(主な産地:日本全国)
  • 褐毛和種(あかげわしゅ):健康に良い脂肪酸バランスが特徴(主な産地:熊本県、高知県のあか牛)
  • 日本短角種(にほんたんかくしゅ):旨みの多い赤身肉が特徴(主な産地:岩手県、北海道)
  • 無角和種(むかくわしゅ):柔らかい赤身肉が特徴(2018年現在、山口県で約200頭が飼養されています。)

【参考】無角和種は、1963年(昭和38年)には約10,000頭が飼養されていました。市場のニーズが赤身肉から霜降り肉へとシフトするにつれ、サシの少ない赤身肉の無角和種は、一気に衰退しました。無角和種の絶滅が危惧された1994年、山口県阿武町を中心に9市町村が参画した無角和種振興公社により、新しい流通システムが構築され、2018年(平成30年)の時点で約200頭が飼養されています。

肥育牛とは、食肉用に育てられる乳牛の雄牛のこと

穀物や配合飼料で育てられて、2歳くらいで体重が約700kgになったら食肉として利用されます。

経産牛とは、繁殖が終わった雌牛のこと

子を産み終わった雌牛を半年程度穀物中心の飼料で育てて、食肉として利用される牛のことを言います。深い味わいの赤身肉が特徴です。

肉質等級は、5段階に分かれています

肉質等級は、「5、4、3、2、1」の5段階に分かれています。

下表に記載の4項目(脂肪交雑、肉の色沢、肉の締まり及びきめ、脂肪の色沢と質)について5段階で判定し、その項目別の等級のうち、最も低い等級に決定して格付けされます。

等級 脂肪交雑 肉の色沢 肉の締まり及びきめ 脂肪の色沢と質
5 脂肪交雑(霜降り)がかなり多いもの かなり良いもの かなり細かいもの かなり良いもの
4 やや多いもの やや良いもの やや細かいもの やや良いもの
3 標準のもの 標準のもの 標準のもの 標準のもの
2 やや少ないもの 標準に準ずるもの 標準に準ずるもの 標準に準ずるもの
1 ほとんどないもの 劣るもの 粗いもの 劣るもの

「脂肪交雑」:さし、霜降り、マーブリングとも呼ばれています。BMS(ビーフ・マーブリング・スタンダード)という判定基準に基づき評価します。

「肉の色沢」:肉の色と光沢を判断します。上記「脂肪交雑」と同様に、BCS(ビーフ・カラー・スタンダード)という判定基準に基づき評価します。

「肉のしまりときめ」:見た目の美しさで評価します。肉のきめが細かいと柔らかい食感を得ることが出来ます。

「脂肪の色沢と質」:脂肪の色が白またはクリーム色であることを基準に判定し、光沢と質を考慮して評価します。つまり、脂肪の見た目の美しさが評価対象になります。

【結論】A5ランク=最高に美味しいとは限らない

A5ランクは、まるで芸術品のように綺麗な霜降りが特徴的で、見た目で美しさを感じさせてくれます。

自分好みのお肉を買うには、何を基準にすれば良いのでしょうか。その基準を等級で判断する場合、最もチェックすべきポイントは、歩留まり等級(※)ではなく、肉質等級です。B5ランクとC5ランクの肉質は、A5ランクと変わりません。繰り返しになりますが、お肉を等級で選ぶ際は、肉質等級(1〜5)で選ぶと良いでしょう。

次に、もう一歩踏み込んだチェックポイントをお伝えします。そもそもお肉の味の決め手は、見た目ではなく脂のクオリティーで決まります。同じ銘柄、同じランクの肉質等級(1〜5)であっても、肉牛の個体差や誰がどのように育てるかによって味は異なります。

どうでも良い話ですが、私の好みはB3です。その理由は、赤身肉に程よいサシが入っていて適度に柔らかく、お肉をしっかりと味わえるからです。そして何よりAランクほど高くない、リーズナブルなお値段なのが嬉しいです。

※歩留まり等級とは、可食部がどれくらい取れるかの違いで、味には影響しません。

【参考】牛肉が家庭に届くまで

かつて牛は、枝肉のまま業務用の大型冷蔵庫で保存し、脂の中の赤身部分を熟成させるという工程がありました。 表面にうっすらと白カビがつけば、カマンベールチーズのように中の脂肪が熟成して、旨みを増していきます。

そのカビを少しずつ丁寧にそぎ落とす作業を「肉を磨く」といい、熟成を経て磨き上げられた牛肉は最上級の味わいとされたものです。

現在は、と殺後の肉は部位ごとに分けられ、真空包装されてから店舗に届けられて、スーパーなどの小売店で食べやすい大きさにカットして販売されています。そのため空気が遮断されている時間が長く、昔のようにゆっくりと肉が熟成する環境は作りにくくなっています。